当たり前を捉え直す― A Film About Coffee

1人あたり約11杯。この数字は、日本人が1週間のうちに飲むコーヒーの量*1。これが多いのか少ないのかはさておき、もはやコーヒーは場所を選ばずにどこでも飲めてしまう「当たり前の存在」です。

そんなコーヒーに対するイメージを見事にぶち破ってくれるドキュメンタリー映画があります。その名も、「A Film About Coffee」。普段何気なく飲んでいるコーヒーの裏側に迫った、約60分間の濃密な物語です。

コーヒーは毎日飲むが、当たり前だとは思わない

この映画のメインテーマは、ずばりスペシャルティコーヒーです。

最近ではコンビニのPB商品(プライベートブランド商品)でもこの名前を目にしますが、スペシャルティコーヒーについての明確な定義は現在のところありません。

しかし1つ言えるのは、大量生産型の均質的なコーヒーではなく、産地や農園ごとに異なる豆の個性を最大限に引き出した高品質なコーヒー、だということ。

「A Film About Coffee」では、このスペシャルティコーヒーが消費者に届くまでの物語を、コーヒー業界の重要人物たちによるインタビューをもとに紐解いていきます。本編の冒頭シーンは、リチュアル・コーヒー・ロースターズ*2のオーナー、アイリーン・ハッシ・リナルディのこんな言葉で始まります。

コーヒーは毎日飲むが、当たり前だとは思わない。

カップを持って感動する瞬間がある。

個人的にとても印象深かったのが、収穫されたコーヒーチェリーが生豆へと精製されていく光景。コーヒー農園で働く人々の手作業によって、手間暇をかけて1杯のコーヒーが生み出されているという事実が、本作を見るとよく分かります。

コーヒーファンの方であれば、果肉除去・水洗・乾燥といった生豆の精製過程はすでに知識としてご存じかもしれません。しかし、品質の高いコーヒーを消費者に届けるべく心血を注いでいる生産者の姿には、心を動かされるものがあるはずです。

普段手にするコーヒーへの意識が変わる。そして、コーヒーという当たり前の存在を捉え直すことができる。「A Film About Coffee」は、そんな貴重なきっかけを与えてくれます。

 

 

A Film About Coffee(ア・フィルム・アバウト・コーヒー) [DVD]

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*1:一般社団法人全日本コーヒー協会による2016年度の調査結果。詳しくは公式サイト(http://coffee.ajca.or.jp/)をご覧ください。

*2:アメリカ・サンフランシスコに拠点を置く有名コーヒーショップ。